「不登校は私にとって必要なことだった」 そう語る教え子の言葉をすべての人に伝えたい【西岡正樹】
人生という道で迷った時に思い出してほしいこと
◾️担任教師のミキへの接し方が変わった
当初、担任教師にとってミキは「おめがねに叶う生徒」だった。だから、自分の理想的なクラスをつくる為、ミキは大いに力を発揮してくれる存在だと期待した。3年生になるまでのミキは、何事にもまじめに取り組み、リーダーシップもあった。きっとクラスが揺らいだ時に何とかしてくれる頼りになる存在として期待していたにちがいない。ところが、中学3年生になったミキは、元気もなく担任教師の期待に応えられるような状態ではなかったのだ。
すると、担任教師は、積極的な態度が見られなくなったミキを「おめがねに叶う生徒」枠から外した。外されたということはミキにもすぐに分かった。担任教師のミキへの接し方が変わったからだ。その大人気ない態度にはがっかりした。担任教師は、私という「存在」を認めてくれていたのではなかった。周りがイメージしている「明るく元気な学級委員のミキ」しか認めていなかったのだと分かった瞬間に、私の気持ちが冷め、「あー、あ」という感じになった。「担任教師にとって、所詮、私は教師の思い通りに動かせる駒にすぎなかったのだ」今、ミキはそう思っている。
担任教師の差別的な対応(教室内にあるヒエラルキーにしたがって)は今までも感じていたが、それを自らの体全身に感じるとその戸惑いは大きかった。「教室内カースト」という言葉が世間を賑わせたのは2010年代だっただろうか。教室内にあるカースト(階級)によって、子どもたちの動きが制限されているという「問題提起」だったのだが、教師側が作り出した「子どものヒエラルキー」が「教室内カースト」をより強固にし、子どもの動きを制限していることが、ミキの話の中に伺うことができる。(確かに、私自身の中にも無意識のヒエラルキーがあったのではないかと自戒する。「クラスを動かすリーダーたち」「それをサポートする子どもたち」「追随するが無関心な子どもたち」「反教室の動きをする子どもたち」子どもたちを無意識に仕分けしている教師は多い。それが「教室内カースト」を生んだ一因でもある)
また、ミキは、中学3年生の時に2人の男子からいじめを受けていた。そのことを思い出すとミキの心は波立つ。担任教師は知らない筈はないと思うのだが、教師から何も問われることはなかった。(当然、自分から担任教師や親には話をしていない)
当初、2人の男子とミキは仲良しだった。そのうちのひとりがミキに好意を持ったことで関係が崩れた。なぜか、ミキは自分に好意を持ってくれた男子の事を気持ち悪く感じてしまい、その男子に対して悪口を言ってしまったのだ。その頃、ミキ自身も感情的な言動が多くなっていると感じていたのだが、それを自分で改めることはできなかった。「今思うと申し訳ない」とミキは話していたが、その頃は、自分の感情を躊躇なく言葉にし、それを相手にぶつけるド直球の子だった。だから、好意を持ってくれた男子だけではなく、もう一人の仲の良かった男子に対しても相手を怒らせる事を言ってしまい、その時には、すでに関係が崩れていた。